こんにちは、えんぢにあです。
“Energy, Oil and Gas News”カテゴリーは、エネルギー、石油、天然ガスに関する記事を、業界外の方々に分かりやすく解説することで、世の中のエネルギー問題への関心・理解の向上に微力ながら貢献することを目的としています。
また、えんぢにあ自身も知識の整理及び足りない知識の学びの機会としたいと思っています。
日経記事: 米原油輸出拡大
2017年12月29日(金)の日経に米原油輸出拡大に関する記事が出ていました。
本記事は有料会員限定記事なので、読めない方の為に概要をまとめます。
- 2017年12月第4週の米国産原油の輸出量が、前年同期比3倍に増えた
- 足元での急激な増加の主な理由の1つは、WTIと北海ブレントとの価格差の拡大。つまり、米国産原油が相対的に割安に
更に、価格差拡大の理由については、以下のようにあります。
8月末の大型ハリケーンの上陸で精油設備に深刻な被害が発生し、同国内での原油需要が急減したためだ。
供給不安=価格下落??
さて、ここからが本題です。
上記の引用部分、原油価格が下がる理由として一瞬あれ?と思いませんか?
石油の供給が途絶えるようなイベントが発生すると、石油の値段は上がる、というイメージを持たれている方が多いのではないかと思いますが、それとこれは矛盾していないのでしょうか?
また、実は、ハリケーン襲来直後、アメリカのガソリンの値段は上がっています(US Energy Information Administration 記事: こちら)。
つまり、原油は値段が下がり、ガソリンは値段が上がったんです。なんだか余計ややこしいですね。
これを理解するには、「原油」と「ガソリン」が、製油所という「装置」にとって、「入力」と「出力」にあたる、ということを理解することがカギになります。
そもそも原油とは、油田で生産され、ガスや水の(一定程度の)分離等最低限度の処理のみを施された油のことを指し、タンカーやパイプラインで製油所に運ばれて処理されることで、より身近なガソリン、アスファルトやジェット燃料等の製品に精製されます。
石油の極々大まかな流れ
油田 ⇒ ①原油(入力) ⇒ ②製油所(装置) ⇒ ③ガソリン等(出力)
同記事で言及されているハリケーン”Harvey”は、テキサス州に上陸したハリケーンとして50年来の強さを持つハリケーンだったようです(こちら)。
そして、テキサス州及び近接するルイジアナ州には多くの製油所(Refinery)が点在しているんです(こちら)。多くの製油所が深刻な被害を受けたと報道されています。
つまり、このハリケーンが、上記「原油の流れ」の②「製油所」の処理力を大きく落としたわけです。もちろんすべてアメリカ国内の話です。
真ん中の「装置」の処理能力が落ちると、当然、その入力つまり原油はだぶつくことになり(=値下がり)、その逆に、その出力であるガソリンは不足する(=値上がり)わけです。
尚、US EIAの記事で面白いのは、ハリケーン”Harvey”, “Katrina”, “Rita”ではガソリン価格が襲来直後に上昇している一方で、”Sandy”, Ike”ではそのような上昇は見られません(ガソリン価格チャートリンク)。後者グループは共に、製油所の集中していない東海岸に襲来したハリケーンであった為ですね。
疑問点
以上、簡単になりますが、個人的に面白いな、また、ひょっとすると業界外の人にはピンと来ないかもしれないな、と思った記事の解説記事になります。
但し、えんぢにあはトレーディングの専門家ではないので、分からないことも当然あります。
製油所が示された地図(こちら)を再度ご覧下さい。製油所以外に”Oil Platform”も多数テキサスからアラバマ州にかけて点在していることが分かります。これは油田の生産設備です。つまり、「原油」の生産設備ですね。
もうお分かりですね。
原油の流れ図の①「原油」の生産にも負の影響があったはずなんです。
それでも原油側に価格上昇圧力がかからなかったのはなぜなのか。
もちろん相対的に、原油の生産に対する影響が、製油所に対する影響よりも小さかった、というのが最も単純な仮説でしょう。今回はこれを調べるところまでは調査対象に入れてません。
マーケットの動きなんて結局誰にも本当のところは分からない、すべては後講釈、と言う見方も正直真実にかなり近いと、トレーディングの素人的には思ってますが、以上のような疑問点は残りました。
今日は以上となります。